現在地

個別半導体の型番 (JIS・EIAJ編)


テーマ:

カテゴリー:

トランジスタやダイオード等の個別半導体の型番はメーカに寄らず、1S1588, 2SA1015, 2SB56, 2SC945といった共通の型番が付いています。これはもともと「JIS C 7012 半導体素子の形名」という規格に基づいて命名されており、この廃止後は「EIAJ ED-4001 個別半導体デバイスの形名」に基づいています。

途中で規格が変わっていますが(JIS C 7012, EIAJ ED-4001ともに改定されているので実際はもっと多い)骨格は変わっていませんのでまとめて説明したいと思います。

型番の構成は「2SC458B」を例にとると次のようになります。

  1. 数字:ここでは「2」
  2. 文字:ここでは「S」
  3. 文字:ここでは「C」
  4. 数字:ここでは「458」
  5. 添え字:ここでは「B」

これらについてそれぞれ見ていきます。

まず1項の数字は次のようになります。

数字 種別 備考
0 ホトトランジスタ・ホトダイオード・これらを含んだ複合体 JIS C 7012:1982で削除
1... 上記以外は(有効電気的接続 - 1) JIS C 7012:1982で上限は4とされた
それ以前は上限無し

複合体(複数の素子が一つのパッケージに入っているもの)では単独素子の接続数を用い、接続数の異なる素子がある場合はその最大のものを使います。
JIS C 7012:1982からは異なった素子が合成して機能を果たす場合は接続数の合計を用いるという規定が追加されました。

つまりトランジスタが2つでも5 (3×2 - 1)ではなく2となります。またダイオードとトランジスタの複合体(そんなものがあるかは知りませんが)は2となります。

ホトカプラなどはLEDとホトトランジスタの複合体ですが、これの接続数は合成して機能するからということで合計して4になります。1982年の改定前なら「0」、以降なら「3」です。
ダイオードブリッジは「1」とされていますが少し疑問を感じるところです。もし7セグメントLEDを命名するとしたら「1」でしょうか、それとも「4」でしょうか? 1982年改定前なら「0」(ホトデバイスと解釈して)、「1」(単独のダイオードが8つの複合体として)、「8」(JIS C 7012:1966には「合成」について記述が無いので無理筋かも)なども考えられます。

規格ではこうなっているのですが、実際はダイオードが1, デュアルゲートFETが3, 残りは2と考えていればほぼ間違いありません。ややこしいデバイスは大抵メーカ独自の型番が使われています。

第2項の文字は半導体を表す「S」に固定です。
EIAJ ED-4001ではトランジスタアレイが定義され、その場合は「A」になります。この時は第1項も素子数に変わります。

第3項の文字は細分類を表すのですが文言が「極性および用途」⇒「種別」⇒「主な機能及び構造」と変化しており、若干の混乱をきたしています。

文字 主な機能及び構造 備考
A PNP形トランジスタ 高周波用
B PNP形トランジスタ 低周波用
C NPN形トランジスタ 高周波用
D NPN形トランジスタ 低周波用
E - JIS C 7012:1966
トンネルダイオード JIS C 7012:1982
PNP形とNPN形を組み合わせた複合トランジスタ 高周波用 EIAJ ED-4001
F Pゲートのサイリスタ JIS C 7012:1966
逆阻止サイリスタ 逆導通サイリスタ JIS C 7012:1982
PNP形とNPN形を組み合わせた複合トランジスタ 低周波用 EIAJ ED-4001
G Nゲートのサイリスタ JIS C 7012:1966
ガンダイオード JIS C 7012:1982
Pチャネル IGBT EIAJ ED-4001
H UJT JIS C 7012:1966
UJT, PUT JIS C 7012:1982
Nチャネル IGBT EIAJ ED-4001
J PチャネルFET
K NチャネルFET
L 光結合デバイス JIS C 7012:1982のみ
M トライアック, ダイアックなど JIS C 7012:1982
Pチャネル形とNチャネル形を組み合わせた複合FET EIAJ ED-4001
P 受光デバイス JIS C 7012:1982
Q 発光デバイス JIS C 7012:1982
R 整流ダイオード JIS C 7012:1982, EIAJ ED-4001共通
S 信号ダイオード JIS C 7012:1982, EIAJ ED-4001共通
T アバランシェダイオード JIS C 7012:1982
V 可変容量ダイオード JIS C 7012:1982, EIAJ ED-4001共通
X ホール効果素子など JIS C 7012:1982
Z 定電圧ダイオード JIS C 7012:1982, EIAJ ED-4001共通

記載の無いデバイスは第3項を省略します。

JIS C 7012:1982より前はダイオードは記載が無いので1S1588(信号ダイオード),1S2267(可変容量ダイオード)のように3項はなく一緒になっていました。

F,G,Hはまったく異なるものに割り当てられてしまっています。
前のものが使われなくなってから切り替えているはずなので通常は困ることは無いのでしょうが、古いものを調べていると「あれっ」と思うことがあります。

有名なのは「2SH21」です。
  • 東芝 2SH21 Silicon P Emitter Planar Unijunction Transistor
    1980年代頃の「初歩のラジオ」誌の常連デバイスでした。弛張発振回路によく使われました。
  • 日立 2SH21 Silicon N-Channel IGBT
    手元のデータシートは「1st. Edition Feb. 1995」となっているのでその頃の登場でしょう。VCES=600V, IC=50Aというパワーデバイスです。

せめて数字が重複しないようにしてくれていれば良かったのですが...

第4項の数字は第1~3項で決まる種類ごとに11から連番で付けていきます。
登録順なので数字に意味はありません。番号が大きいほど新しいという目安になるくらいです。また番号はメーカごとの登録なので、同じ仕様でもメーカが異なれば別番号ですし、型番でメーカが特定できます。

最近では生産終了したデバイスの同等品を供給する海外メーカがあり、オリジナルと同じ型番を付けていることがあります。これは新規に登録すれば別型番が付くはずですがそうはしていません。同じ型番であることに価値があるからでしょう。

たまに特性の似たものをまとめて登録するためか、連番で兄弟デバイスがいたりします。

第5項の添え字は必要に応じて以下のような文字が付加されます。

  • 変更を加えたときにA,B,C,D,E,F,G,H,J,Kと順につけます。最初の例の2SC458Bは2度の変更がなされていることがわかります。
  • ダイオードで電気的・機械的に同一だが極性が逆のものにはRをつけます。
  • マイクロ波用ダイオードでMをつけることがあります(詳細省略)。

これらは組み合わされて使用されることもあります。例えば逆極性のものが変更された場合は「AR」などとします。

さらに「‐」(ハイフン)に続けて付帯形名を付けることもできます。
たとえば2SC1815には「-O」「-Y」「-GR」「-BL」などが付いてhFEのランク分けがされています。ただこれは決まった付け方があるわけではないのでメーカによって異なりますし、同メーカでも品種によって異なることもあります。

とりあえず日本で主流の命名法を書いてみました。細部をはしょったり意訳している部分もありますので正確なところは原資料にあたってください。

あと数回にわたって海外で広く用いられている命名法についても書く予定です。

参考文献・関連図書: 
『JIS C 7012:1966』日本規格協会.
『JIS C 7012:1982』日本規格協会.
『EIAJ ED-4001A』2005年改訂版,電子情報技術産業協会.

コメント

情報ありがとうございます。

東芝は品番付与法を公開していますので見てみました。

どうやらJEITA登録品はもちろんJEITAの命名法に従って2SA,2SCの番号を、それ以外は独自のハウスネーム(ハウスナンバー)のTTA,TTCを、と使い分けていますね。関係者ではないのでどう使い分けているのかはわかりませんが。

コメントを追加

Plain text

  • HTMLタグは利用できません。
  • ウェブページアドレスとメールアドレスは、自動的にハイパーリンクに変換されます。
  • 行と段落は自動的に折り返されます。
※ コメントは原則公開です。個別のご相談などは「ご意見・ご要望」からお願いします。