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パーソナルなコンピュータのグラフィック事情 (第6回: 640x400)


さらに一部の機種では640×400ドットが使えるようになりました。

日本語(漢字)を表示したときに12行ではやはり不便であること、ドットが極端(約1:2)な縦長では使いにくかったことが理由だったのではないかと思います。
これには大きく2通りのアプローチがありました。

一つはFP-1100などで使われた方式です。モニタは640×200で使われていた水平同期周波数が15.7kHzのものをそのまま使用し、インターレススキャンすることにより縦方向の解像度を倍にするのです。実質的な垂直同期周波数が半分になるので若干のちらつきが発生しますが、使えないほどではありませんでした。またインターレスで使うことを想定した長残光性のモニタもありました。

ブラウン管というのは管面を電子線でスキャンし、表面の蛍光体を発光させることで表示しています。ある1点は垂直同期周波数が60Hzであれば1/60秒に1回一瞬発光しているだけで、点滅しない点として見えるのは目の残像のおかげです。インターレスにすると1回のスキャンでは偶数ラインか奇数ラインのどちらかをスキャンし、2回のスキャンで全ての点をカバーすることになり、ある1点が発光する周期は1/30秒に1回に減ってしまいます。目の残像だけでカバーできなくなってちらつきを感じるようになります。
長残光性のモニタは蛍光体に蓄光性をもたせ電子線があたった瞬間だけでなくしばらく発光し続けさせているのです。この時間はかなり長く、画面をクリアしてもフワっと消えますし、カーソル等を動かすと尾を引くのがわかるほどです。ゲーム等にはまったく向きません。

もう一つは水平同期周波数が24.8kHzの専用高解像度モニタを使用するもので、PC-8801, PC-9801といった機種に採用されました。
PC-9801では640×400×3=768,000ビット=約96kBのグラフィックVRAMを搭載して8色使えましたが、PC-8801では48kBのうち32kBを使ってモノクロ(テキストのカラー情報を使って文字単位のカラーは可)表示となっていました。
この頃のモニタはマルチスキャンではありませんから640×200モードに切り替えても水平同期周波数は24.8kHzのまま偶数ラインと奇数ラインに同じものを出力しているだけです。15.7kHzのモニタを接続する場合にはスイッチ等の切り替えが必要で、640×400モードは使えなくなります。

これで日本語の40桁×24行の表示が可能になり、ソフトウェアの日本語化が進みました。逆にこれ以上の解像度を求められることは少なかったようで、同期周波数を変更するとそれ用のモニタも用意しなくてはならないこともあり、しばらくは640×400の時代が続くことになります。


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